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㊙ファイル

任務:記憶処理
担当者:翡翠

 

花連『ローズ』所属、カサブランカ 偽名:馬場逸見。

 

「………あ、れ?」
 ここは…?
 うっすらと目を開けて、声をあげた。
 声を…
「え゛っ?!」
 声が…出る。
 起き上がり、ゆっくりと指を動かす。
 そんな指の動きを、自分自身で確認する。

(生きて…いる…)
 自分は、生きている!

「何でだっ?!」
 あの時、自分は死んだのではなかったのか?

+++++

「ネムレ」

それは、死の宣告よりも…

+++++

 カサブランカは、考えた。
「…あれ?」
 そう考えたよな、自分…。
 腕を組んで、さらに思い出す。
(そう、それから…)

+++++

「…私は“くれない”。『赤』グループに籍を置く者」

「…『赤』は、血の赤」

「処理班であり、…暗殺を担当している」

+++++

 彼女はそう、言った。
 そう、それで首をつかまれて…っ!!!
 …つかまれて…

「生きてる…?」

 なぜ?
 あの時の恐怖空気
 ――あれは、殺気だったろうに。
「なぜ…?」
 いや、殺気だ。紛れもなく、殺気だった。

「あっ、起きた」
 ビクッ
 カサブランカは動揺した。
 考え事をしていたとはいえ…暗殺者である自分が、人の気配を感じなかった。
 声の方に振り返る。
「!」
 ギョッとした。
 同じ人間が…2人いる。

「あ」
 と、思ったら。
 そうだ、この世の中には双子ってヤツがいるのだ。

「おはよう」
 右側の女が、微笑みながら言った。
 間もなく左側の女が微笑みながら続けた。
「んでもって、おやすみ」
 シューッ
「わっ!!」
 カサブランカの顔に、何かが吹きかけられる。

(催眠…スプレー…)

 ――カサブランカの意識は、そこで途切れた。

+++++

「聞きたいことは聞きだしたしー」
「でもあんまり情報量は変わらないわね…」
「そうねぇ…。仲間を信用してないのかしら?」
「ま、他の組織がどう運営していようと、アタシ等には関係ないわよ」
「そりゃそうね」
 見慣れない者が聞いていると、それぞれの言葉をどっちの女が言ったかわからない。
 …いや、見ていても分からないだろう。
 彼女らの違いは『アタシ』と言うか『ワタシ』と言うか、ぐらいなのだ。
 髪型や格好、全てが『お揃い』だった。
「んじゃま、やるか」
「そうね」

 彼女らは『翡翠』。
 2人で翡翠だ。
 【彩】の緑グループ…不思議な力を扱えるグループに所属している。
 そして2人の今回の仕事は、『カサブランカ』を『消す』ことだった。
 消すと言っても、命を奪うのではない。
 『カサブランカ』であった『記憶』を消すのだ。

 …カサブランカが紅にやられてから3日後――つまり馬場逸見が姿を消してから3日後、馬場逸見は砂倉居学園に復帰した。
 馬場逸見曰く。

「UFOを見たんです…ッ!! そ、それから、『アナタは選ばれた者だから、共に戦おう!』って、サブちゃんにそっくりな人が…ッ!!」

 学園新聞に、馬場逸見の発言と写真が載っていた。
 新聞を見て、紅が一言。
「…記憶処理をしたのは、翡翠だな」
 そんな紅の言葉に、藍は一言。
「…100%、翡翠だね」
 双方、心のつぶやき。

(もっと現実っぽい理由の方がいいんじゃないか…?)

 

+++++

 皆様に死んだと思われて(?)いたカサブランカは、実は生きていたのでした。
 何と言っても【彩】では『殺人』を御法度にしているのです。
 もちろん、法律でもそうなんですけどね。

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