「………は?」
――4月1日。
今度の月曜日から新学期で…とうとう3年生になる。
久々に母さんの作った夕飯を食べながら――「明日も晴れるかしら」と同じような言い方の母さんの言葉に――オレ…上沢斗織はたっぷり間を置いてから、ようやくそれだけ言った。
「だから」
母さんはニコニコと笑ったまま、同じ言葉を繰り返す。
「明日、斗織の弟が来るから」
仲良くしてね、と「うふ」とか言いつつ母さんは指を組んで首を傾げた。
母さんの言葉は繰り返し…2回聞いたものの、脳みそで理解するのを拒否しているらしい。
オレは「…誰?」と重い口を開いた。
「だから」
斗織ってば耳が遠くなっちゃったの? と母さんがちょっと唇を尖らせる。
(…なんでこう、動作がガキっぽいんだ…?)
関係ないことを思いつつ、オレは向かい側に座る母さんの言葉をしっかり聞いた。
「斗織の弟。あたしの息子」
トオルの、オトウト。
アタシのムスコ。
「………はぁ?」
オレは眉をひそめ、再びそう言った。
● ● ● ● ●
『ウソつけ』とオレは笑えない冗談にツッコミをかました。
…それに対して。
『冗談なんて言ってもしょうがないでしょ〜? …あ、今日はエイプリルフールだけど、ウソじゃないわよ』
4月1日…エイプリルフール。
――だけど、冗談ではないらしい。
『養子にでてたのよぅ…お母さん一人じゃ二人はちょっとツライでしょうからって』
オレに父親はいない。母さんと二人暮らしだ。
『だから、斗織の弟…あ、ちなみに真斗ね。真斗を養子にしたの』
なぜ、今更。
『…その、養子にでたマナトが来るんだ?』
オレが聞き返せば、母さんはニッコリと笑顔を浮かべ
『なんとなく』
きっぱりと、そう言った…。