雨が降っていた。
　暗くどこまでも続く道に…雨が、降っていた。

「歌澄（かすみ）様…歌澄様…っ」

　一人の男が、少女を抱きながら…抱きしめながら、声をかける。
　…半ば、叫ぶ。

　それを一人の少年と一人の少女が見つめていた。
　――その様子を、呆然と。
　悲しみのあまり、声も…涙も出ないようだ。

「目を…覚まして下さい…――お願いします…どうか…」

　声が震えている。
　――それは、この雨の冷たさに凍えているのではなく
「歌澄様！！」
　…腕の中の少女に、自分の声の届かないことの悲しみで肩を震わせていた。

「歌澄様！！」

　その声はどこまでも響きわたる。

雨が降っていた。