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七

「…舞翔さん、いけたかな」

 『死』を忘れてしまっていた舞翔は天へいけただろうか?
 空を見つめ、ふみは呟いた。
 月が、雲の隙間から姿を現す。

「…うん。いけたよ。きっと」
 ふえがそう言ってふみの肩をぽんぽんと叩いた。

『迷惑を…かけました』

 静かな声が、二人にとどいた。
 静かな…歌澄の声が。

「歌澄さま」
 ふえが歌澄を見つめる。目が合うとにこっと笑った。
「歌澄さまは、やっぱりすごいですね」
 それをふみは横で「うんうん」首を縦に振って同意している。

『…舞翔の思いも知らず、ひどいことを言ってしまいましたね』

 大切だった。――確かに。
 …けれど、それは『家族』として。
 『仲間』として。
 舞翔の思いを…歌澄への想いを、歌澄は知らなかった。
 歌澄は微かに唇を噛んだ。
 そっと、目を閉じる。

「――いいえ」
 歌澄の言葉に…様子に、ふみが首を横に振った。
 歌澄へと、告げる。
「ウソをつくよりは、ずーっと良いと思います」
「それに、最後に笑っていたではありませんか」
 ふみ続けて、ふえはそう、つけ加えた。
 二人のそれぞれの言葉に、歌澄が泣き笑いのような顔をする。

『そうね。…そうです…ね』

 歌澄は、ふみとふえとを交互に見た。
 瞳に…心に焼き付けるように、二人を見つめた。

『――ありがとう…』
 呟きは、微かなもの。

『…そして、さよなら…』
 囁きは――僅かなもの。

 歌澄はそう言うと、月の光に導かれるかのようにして消えた。
 声なく言葉なく…二人は、その様子を見つめる。

 さようなら、と別れの言葉を呟いた。
 ――歌澄と…舞翔と、二人へ。

 もう、会えることもないだろう。
 そう思いながら…空を見上げる。

 ――二人を、思う。

 笛は、ふえとふみと…二人の手元に残っている。
 ――確かに歌澄と再会した、証拠(あかし)として。

夜の話−左に三ッ星を握るもの−<完>

1999年12月30日(木)【初版完成】
2008年 8月27日(水)【訂正/改定完成】

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