――それは嵐の夜。
「ま、待て…待ってくれ!」 壁に追いつめられた男は、自分を見つめる…見下ろす、髪の長い者に懇願した。
「金…金を、やるっ! だから…命だけは…!」 浅く、荒い呼吸を繰り返す。
男の様子に…言葉に、対面して立つ者は細い腕に不釣り合いな長い剣を一度おろした。 追いつめられていた男は一つ、息を吐き出す。 そして…次の瞬間。
「――ぎゃあ…っ!!」
――その声は激しい風に溶け込み、誰にもとどくことはなかった。