…12月中旬。ちらちらと粉雪の舞う、ある日のこと。
昼食をとるための昼休み。
その放送に、クラス中が沈黙した。
『開票の結果、本部会長は2年2組高階樹くんに決定しました』
しばらくの沈黙の後…一部から大きなどよめきと歓声が上がる。
「やったじゃん、樹!」
放送をぼーっと聞いていた樹は、友人からグシャグシャと頭を撫でられると、ハッとしたように返事をした。
「お、おう」
中途半端に、空で箸が止まっている。そんな様子にクラスメイト達は続けて声をかける。
「何ボーッとしてんだよ、樹!」
「お前、本部会長だってよ!」
樹はそれぞれの言葉にゆっくりと瞬きをした。おもむろに、右手で左手をぎゅっと抓る。
「……痛い」
「何やってんだよ、夢なんかじゃないって」
典型的ともいえるその行動に、友人は笑いながら樹の背中を叩いた。
「…うん、うん」
樹は一方で箸を、もう一方で拳を握ると、拳を高く振り上げた。
「おっしゃぁっ! オレは本部会長だぜぃっ!!」
※ ※ ※
そんな様子を見ながら、美海は『ああよかったね』くらいの感想しかもたなかった。
クラスメイトのよしみで樹に投票はしたが…正直、『誰が本部会長になろうと関係ない』と思っていたから。
しかしその考えが正しくなかったことを…美海は数日後に知ることとなる。
美海はそんなこと露ほどにも知らず、もくもくと昼食を口に運んでいた。