ドン、と衝撃があった。
「あぁっ、ごめんなさい! すいません!!」
「あ、別に…」
構わないよ、と彼は続けようとしたのだが…。
「きゃーっ!! 遅刻ーっ!!!」
…彼の言葉は聞かず、少女は走り去っていった…。
「…くっ」
しばらくそんな少女を見送っていた彼…ではあるのだか、パッと見て『彼女?』と間違えてしまいそうな外見ではある…ファズ・セレイルは思わずというようにふきだした。
「元気だなぁ」
呟きながら、ファズは目に鮮やかなオレンジの髪を一度かきあげた。
笑い上戸なのか、いまだに肩を震わせている。
「ま、オレっちも急がなきゃ、だけどさ」
言いながら、『どこが急がなきゃ?』というような調子で歩き始めた。
東方大国…カスタマインの城下町。
レンガの連なる町に穏やかな風がめぐった。