「ここまで咲くと、やっぱ見事だな」
有子の言葉に「そーだねー」と空はノンビリと笑う。
「今度お花見しよっか〜」
ノンビリぼへぼへ続いた言葉に、有子はピタリと止まった。
「花見はいい。…だけどな」
「?」
空はまるで子犬のようなつぶらな瞳で有子を見上げる。
犬派な有子はちょっとクラッときた。…が、ココで負けてはイケナイ。
「ここでやるなよ?」
「えー。人も少なくてよくないー?」
「墓場でやるな」
実は『コエ』が聞こえる有子は力強く言った。
…あまり幽霊が得意ではない有子はちょっとばかし唸る。
「ってかなんでまた墓参りに付き合ってんだ、あたし…」
「あんこが優しいからだよ」
ね、と空は笑う。
…強面な有子を『小椋』だからと(お菓子の)『あんこ』と呼ぶのは、この少女くらいなものだった。