SAKURA

 ――あぁ、コレは夢だ。
 春はどこかでそれがわかった。

 現実ではない。
 花の夢。…桜の夢。
 ――はなの、夢。

 

「――…」
「あ、起きた?」

 問い掛けに少女は瞬いた。
 うつ伏せていた机から身を起こし、声の方へと視線を向ける。

「…さくら」

 声にして呼びかけて、今が『現実』なのだと…安堵する。
「? そろそろ昼休み終わるよ」
 『今』が『現実』なのだと――自らに、言い聞かせる。

「…そんな、時間…か…」
「そ。そんな時間」
 日向ぼっこをしながら、窓辺で昼寝をしていた。
 開け放った窓から風が入り込んでくる。

「…なんか、匂う?」
「え?」
 春の言葉にさくらは瞬いた。
 瞳を閉じてニオイを感じ取るように。
「――わからないけど…花のニオイでもするのかもね」

 咲いている花。
 …咲いている、はな

 微かなニオイに、記憶が呼び起こされる。
 ――遠い遠い、記憶を。

SAKURAモドル