SAKURA

「紅深サン」
 呼びかけに、少女は振り返った。
 振り返った少女…紅深に呼びかけた擢真は嬉しそうな笑みを浮かべる。
 桜がひとひら、ふたひらと舞い落ちた。
「…擢真くん」

 心持ち、いつもと違う何かを感じた擢真は思わず問い掛ける。
「――どうしたんだ?」
 紅深の指先が擢真の指先に触れた。
 擢真はドキリとする。
 …童顔な紅深。
 でも…手は、『女性』の手をしている…ように擢真は思える。

「春…今年のお勧めカラーは紫…」
「…? 紅深サン…?」
「桜シーズン…桜色もやっぱステキ…」
「???」

 ぎゅ、と紅深の擢真を掴む力が強くなった。
「お化粧させて」
イヤデスよ!!
 化粧(をヒトにするのが)好きな彼女に、擢真は半ば叫んだ。

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