WAKABA

「ユーラ」
 呼ぶ声にユーラは視線を落とした。
 …隣の、線の細い少女へと。

「はい」
「…少し、止まってもらってもいい?」
「はい」
 移動の途中ではあったが、病弱な彼女のこと…休み休みいかなければ、体がまいってしまう。
 休息を求める少女…アルスタインの言葉にユーラは応じ、馬車を止めた。

「外の空気を吸いたいわ」
「はい」
 ユーラは頷いて窓を開けた。
 途端に風が、馬車の中を巡る。

「…気持ちいいわ、ね…」
 ふわりと浮かんだ笑み。
「――はい」
 ユーラもつられて笑う。

 …どうか、この笑顔が守れますようにと祈った。

歌姫モドル