「ほ、ほ、ほーたる来い♪」
楽しげな声に知都世は視線を落とした。
「まだいなくない?」
…夕方。
完全に日は落ちきっていない。
「いるにはいるんじゃない?」
目立たないだけで、と莢華は応じた。
「ってか、蛍って夜行性?」
「…なんじゃないの? 夜に光って行動してそうな気がするけど」
なんでこんなに蛍談義をしているだろう、と頭の片隅で思いつつも知都世は足を進める。
「蛍の光って、結局はきゅーあい?」
「でしょ?」
オスの、メスに対するアイの表れ。
――自分を見て、と。
「人間で考えるとオカシイヒトだよねぇ」
ポソリと莢華は呟いた。
「だってお尻が光って「ヘイ、彼女〜」でしょ?」
「…」
莢華は腰に手を当てつつ、腰を振る。
ついでにもう一方の手は頭よりも高くしてクイクイと動かした。
――しばらくの、沈黙。
「…ぅく…っ」
「?」
首を傾げる莢華を尻目に、知都世は笑う。笑ってしまう。
「そういえば、そうだね」
そう言いながらも、蛍を人間に想定してついでに踊った莢華がおかしくて知都世はまだ笑う。
「え? ナニ???」
笑いの止まらない知都世がわからない、というように莢華はまた首を傾げた。