――眠れない夜。
カーテンを開けて、外を見た。
…隣人の部屋の窓の明かりも消えている。
(当たり前か)
それくらい、遅い。
声にしないまま、隣人の名を唇でかたどる。
『み ず き く ん』
「……」
――答えなど、あるはずもない。
妃巳はカーテンに手をかけた。そのまま、締めようとする。
その時。
「――?」
視界の隅に映ったモノ。
何だろう、と思わず手が止まる。
――微かな光。
小さな、ヒカリ。
…蛍だ。
じっと、見つめた。
ゆっくりと光って、消えて…そう繰り返される光。
――命、そのもののような。
「……」
光る蛍。舞う光。
妃巳は、その光を眺めた。