「何気にホタルって見たことない気がするんだけど」
突然の幼馴染みの言葉に「そう?」と風笑美と淡々と応じた。
「ホタル祭りなんてあるんだ…」
テレビを見ながら、言った。
地元ニュースで、聞き覚えのある地域――むしろ隣町――に反応したらしい。
「……」
風笑美はゆるゆると瞬いた。
過去になら、ホタルを見たことがある。
本来ならあまり記憶がないであろう――前世、という過去でなら。
「行ってくれば?」
「つめたいなぁ」
カタコトちっくに芙水恵は応じる。
「気のせい」と風笑美は目を伏せる。
――過去の蛍に、思いを寄せた。