HOTARU

 潮の風と香り。
 ――もう、慣れた。

 眺める海。
 波間に光るのは――。

「竜海」

 斐は傍らの少年の肩を叩いた。
 振り返った少年――竜海の視線を、波間へと向けさせる。

「アレ、ナニ?」

 夜の光。
 空の月と星と、波間の煌めきと――。

 斐の問い掛けに「あぁ」と竜海は応じる。
「うみほたるだ」
 青みがかった光。
 波の、月や星の反射ばかりではない…自ら、光る。
 竜海の答えに「ふぅん」と斐は声を上げた。

海神伝モドル