HOTARU

 闇の中に見えた、複数の光。
 ふわりふわりと――シグナルのような。

「…どうした?」
 夜道を手をつないで歩く。
 問い掛けに、少女――眸は顔を上げた。
 指差し「ひかり」と呟く。

「…ああ」
 知らないか? と新は言った。
 新の呟きに眸は首を傾げる。
 「なに?」と口の中だけでまた、問う。

「蛍だよ」
「…ほたる?」

 真っ直ぐな黒い瞳を、新は見つめ返す。
 少女を抱き上げた。自ら名付けた、眸を。

「夏の、虫だ」
「むし…」

 虫が光るの? と不思議そうに言われて「光るんだよ」と新は笑う。
 ほわほわと点いたり消えたりする光。
 新に抱き上げられた眸はじっと、それを眺めた。

【彩】ファイルモドル