「蛍!!」
「…が、どうした」
「いや、いたから」
言ってみただけ、と少年は言った。
――十にも満たない少年。
おそらく、年頃としては蛍を発見して騒ぐのも変ではないだろうが。
「…その程度で騒ぐ器か、お前が」
低く、カシーサは言った。
「僕をどんな目で見てるのさ」
「むぅ」とした顔をするが、カシーサは騙されない。
…年頃だけで、ガナマを判断してはいけない。
今だって、『仕事』の帰りだ。
十に満たないが…ガナマは十分に、十二分に、『仕事』や『金』に関わり、担っている。
「…捕まえたら、おねーちゃん喜ぶかな」
ポソリ、ガナマは呟いた。
「――…」
その言葉に、カシーサは脳裏に一人の少女を描いた。
穏やかな、灰色の瞳の。
「と、いうわけで捕獲任せた、カシーサ!」
「…なんで俺が」
『と、いうわけ』の接続詞がおかしい。
「おねーちゃんの喜ぶ顔が見たいっしょ?」
「……」
それは否定しないし、おそらくガナマの本心でもあるのだろうが。
(――やっぱクソガキだな)
カシーサはふぅ、とため息をついた。