「ねぇ、そーやん」
「…なんだ」
部活帰り。
別に約束をしているわけではないのだが、ほぼ毎日一緒に帰っているチビとノッポ。
チビ…潤はノッポ…穂波へと声をかけた。
並ぶ影は実際と同じように、激しい身長差を示す。
――長くなる影だから、余計に激しい身長差になった。
「なんで夕方の空って赤いのかな」
見事なまでの夕日。
けれどなぜ、青いはずの空がオレンジに染まるのだろう?
潤の問いかけに穂波は瞬いた。
「…それは、『どうして空が青いのか』と似たような原理、だ」
「?」
瞬く潤に、雑学本をよく読む穂波は淡々と続けた。
光の波長の話などを、淡々と。
「…それで――夕方になると地球自身の傾きと自転によって太陽の光のさしこむ角度が変わると、昼間とは違う色…赤っぽい光がもっともよく届くようになる」
「?????」
よくわからず、潤はパチパチと瞬く。
説明を終えた穂波は、そんな潤の様子を眺めた。
「…こたつの赤外線みたいなものだ」
穂波の言葉に潤はまた、瞬く。ちょっとばかり考えるような顔を見せて「おぉ」と手を打った。
「そういえばこたつの中は赤いね!!」
「…その光が、夕日」
「へぇ〜」
一部わからなかったが、結局は。
「夕日はこたつなんだね!!」
…と、潤は納得する。
穂波は数度瞬き、ちょっとばかり視線を泳がせ…
「…まぁ、そう…」
「…か?」と自らに問いかける。
そんな穂波の最後の問いかけに気づかないまま「へぇ〜」と潤は夕日を眺めた。