YUUHI

 夕日の色は、朝焼けの色にも似ている。

 夕日が落ちて、夜へと変わる頃。
 夕闇へと変わりゆく、空の蒼。
 灯の好きな色…好きな時間だった。

 灯は変わりゆく空を眺めた。
 赤、オレンジ。
 黄色、白…言葉にできない色を眺める。

「…灯」
 灯は呼びかけに振り返った。
 鮮やかな、赤。
 ――夕日のオレンジがかった色とは違う…色。

 朝焼けに染まる雲。
 灯は、その色と時間も好きだった。
 だから。
 その名にふさわしい色の子供に、名をあげた。
 一方の蒼の髪と瞳の子供には夕闇へ変わりゆく空の名前…夕夜と。
 そして今、目前に立つ――寡黙な、鮮やかな朝焼けの紅の髪と瞳の子供には。
「明夜」

 名をあげた二人の子供は、『灯』という名前をくれた。
 灯が呼びかけると…明夜は沈黙したまま、灯を見つめる。

「おいで」

 少し手を上げて、明夜へと差し出した。
 近付き、灯へとひざまずくようにしてその場に腰を下ろす。
 灯は触れられる距離に近づいた明夜の紅い髪を撫でた。
「息災か」
 そのまま明夜の頬に触れて、問いかける。
「…ああ」
 明夜は触れる灯の手に自らの手を重ね、目を閉じた。

クニサカの樹モドル