MOMIJI

「きゃ…っ」
 突然の風に、夏鈴は思わず声を上げた。
 目を開いて――
「うわー…」
 今度は、みちるが声を上げる。
 風に乗って、葉が舞う…その様子に。

「きれいだねぇ」
 呟いて、みちるは手を伸ばした。
 手の平が空を泳ぎ、一つの欠片を手にする。

「ゲット!」
 ――赤い紅葉もみじを掲げたみちるの様子に夏鈴は少しばかり笑った。
「お見事、ですわ」
「ふっふっふっ」
 たまには僕もできるんだよー、と日頃決して俊敏とは言い難いみちるは胸を張る。
 くすくすと笑う夏鈴に、みちるは手にした紅葉を差し出した。
「はい、戦利品」
 差し出された紅葉に、夏鈴は数度瞬く。
 鮮やかな、秋の欠片。

「…ありがとうございます」
 今日という、思い出の欠片。

砂倉居学園モドル