「…あれ」
「よぉ」
「…まだいたの?」
「まだって…なんだそれ」
「酷いな、おい」とも続けながら井沢はくくっと笑う。
少女…有子は、井沢の幼馴染みの友人だ。
母校に教育実習にいって…出会った。
気の強そうな――というか、ちょっと『強面』とも思える、目つきの鋭い少女。
ぼんやりしている井沢の幼馴染みと、見た目だけで判断すれば仲良くなるタイプには思えないが。
教育実習の間、少しだけ覗き見えた二人の日常。
――そこからは仲がいいのだろう、と思えた。
「なんだ? 空と遊ぶのか?」
「うん、ちょっとふらふら」
「そっか。気をつけてな」
「おう」
有子はちょっとばかり手を上げる。
…その手には、赤い何かがあった。
「…なんだ、ソレ?」
「ん? …ああ」
井沢の問いかけの意味がわかったらしい有子は応じる。
「拾ったんだ。空に土産」
手に持っていたのは――紅葉の葉だった。
多分、空なら純粋に喜ぶ。
「そぉか」
井沢は、少しだけ笑う。
やっぱり仲がいいんだな、と再確認した。