月明かりに照らされた、赤。
秋に染まる、紅葉の葉。
太陽の下とは違う赤。
月と、紅葉と。
「涼清様」
呼びかけに、ぼんやりと景色を眺めていた涼清は振り返った。
「櫻の君」
自分しか呼ばない名に、微笑む。
「ぼんやりされて…どうなさいましたか?」
問いかけに涼清は瞬いた。
「――月の下の紅葉もまた…風情がある、と」
「…あぁ…」
涼清の答えに櫻の君は視線を動かした。
月と、紅葉。
――月明かりと、紅葉と…櫻の君と。
「美しいですね」
呟きに、涼清は僅かに目を細める。
――美しいのは、櫻の君も。
そう、言葉にはできないまま――。