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4,光

 みちるは式場に戻った。
 パッと、かおるを見つけだす。
(すぐに見つかるなぁ)
 そんな自分にみちるは心中で苦笑してしまう。
 何か談笑しているかおるの横には夏鈴がいる。

 みちるは二人の元へ行こうとした。
 …のだが、ポン、と肩を叩かれる。
 みちるは振り返った。

 そこには先ほど会話をしていた二人以外の、いるはずのない人物が立っていた。
 …光である。

「――光兄さん」
 思わず、名を呼んだ。
 かおると一緒にいたのではなかったか。
 みちるはそんな思いで光を見つめ返した。
 ついでに、疑問を投げかける。
 先ほどの二人には訊かなかったことだ。
「なんでここにいるの?」
 このパーティは、一応卒業祝賀パーティという名目である。
 故に、砂倉居学園の今年度卒業生が参加するパーティのはずだ。
 なぜ関係のない(…といったら少し失礼かもしれないが)人間がいるのだろう。
 そんな思いで投げかけた疑問に、光はあっさりと応じた。
「会費を払えば参加できるんだよ」
「…あ、そうなんだ」
 企画などに全く関与してないみちるは驚きの声をあげる。
 だから、卒業生以外の人間がいるのか。
 そう納得したみちる。
 しばらくの沈黙が訪れる。

 光が「行こうか」と声をかけたのだが、みちるはその光の肩をガシッとつかんだ。
「一言、言わせて」
「?」
 みちるに肩をつかまれた光は疑問符を飛ばしながら、振り返る。

(…かおる…)
 みちるは、心中で名を呼んだ。
 誰よりも…誰よりも愛しい少女の名を。
 一度、深呼吸する。ゆっくりと、瞬きをする。
 …式場のざわめきが、遠くに思えた。

「かおるを泣かせたら許さない」

 みちるは、光を見つめた。
 光は、みちるを見つめた。
 …光が見つめた先には強い意志の瞳がある。
「――それだけ」
 そしてみちるはふと、口元だけに笑みを浮かべる。
 …瞳は変わらず、強いものだ。
 言いたいことだけ言うとみちるは「行こう」と光を誘った。

 すると逆に今度は光が、みちるの肩をつかむ。
「ボクは…オレは…――」
 その後、一度音もなく口が開かれる。
 そして、閉じられる。
 小さく「…いや、なんでもない」と言って、光は続ける。
「わかった。…わかっている。かおるは、泣かせない」
 絶対に。
 光の言葉にみちるは満足げに笑みを浮かべる。
「うん」

「それじゃ行こう、光兄さん」
 みちるは光に言った。
 短く、光は応じる。
 二人の想う少女のもとへ、足を進めた。

 
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