水樹くんが私を救ってくれた。
夢は気になるけれど…。
水樹くんの言葉で、私はまた頑張ろうと思った。
「先輩…。お話というのは?」
少女は夜の公園で少年に問う。星は少しの光しか与えてくれない。
「…好き、なんだ」
「…え…」
少女は微笑んだ。その顔には『幸福』しかない。
「もう一度、あの頃のように…」
「はい…。先輩…」
少女は少年の胸に飛び込もうとした。少年がそれを自然に…だが、故意によける。
「こんな遅くに悪かったね」
「いいえ、いいえ! お話ができて嬉しかったです…!」
「じゃあ、もう少し、いいかな?」
少年はみずから腕を差し出した。
少し遠慮がちにその手をとる。2人はゆっくりと歩き出した。
「あれ今日、いずみちゃん欠席?」
廊下を歩く僕の耳にそんな言葉が聞こえた。
いずみ…水島さんというのは、昨日の3人組の1人で、今度の学園祭で、劇の主人公をやる人のことだ。
昨日の様子を思い出す。…元気そうに見えたけどな。
「たっだいまーっ」
今日の準備も5時まで…と見せかけて、昨日の分、長く働いてきたからただいま6時半…ひどいや、みんな。
…あれ? いつもは「お帰り」という声があるはずなのに、今日はその声がない。
ひょいっと、離れを見る。
僕はまわれ右をした。…電気がついている。
それは、つまり、仕事の依頼が来たということで…。
僕も働かせられるかもしれない! この忙しい時期なのにっ!!
僕は居間に入ってテレビをつける。
面白くもない、クイズ番組が写し出された。
「…仕事、何だろ?」
――マタ命ガ消サレルノデアロウカ?
僕は首をフルフルと振った。…そんなこと、させない。
手を握り締める。
(僕がくい止めてみせる)
――そう思って、ハッとする。
…働かない、って思ったばかりだったのに…。
「…水樹」
「僕、仕事はやらないよ」
父さんのその後に続く言葉を言わせる前に宣言をする。
「え、や、やらない?」
「だって、僕だって学園祭という大きな行事があるんだもん。学校行事に専念させてよ」
「水樹…」
父さんは息をのんだ。
「ひみちゃんもこの仕事やるぞ」
「…」
え、と思った。――ら。
「なんてな。14代目の命だ。仕事をやれ」
…そんな言葉が続いた。
「くっそー」
思わずそんなことを言ってしまう。
でも、ひみちゃんもやるって本当かな? 本当だったらちょっとやる気出るかも…。
そうだ、あとでひみちゃんに訊いてみよう!
僕は部屋に戻った。ひみちゃんの部屋に明かりがついていたから合図をしたけど返事がなく、僕は首を傾げた。