「いい部屋だったろう?」
ああ。…本当に、宇宙みたいな部屋だったねぇ。
「だろ?」
しかしなぁ…。ありゃあ『部屋』かい?
「まぁ、細かいことは気にするな」
――細かいかねぇ?
…しかし、まぁ――ありがとう、会わせてくれて。
「いや、いいよ。…いろいろと、話せたかい?」
あぁ、そうだね。いろいろと、話せたよ。
「言いたいことは、言えたかい?」
そうだな。…なんでか…あの子は、わしに『借り』があると思っていたようだよ。
「借り?」
あぁ。でも、そんなのはあの子の気のせいさ。
返されるものなど、何も無い。あの子がいてくれただけで、わしは幸福だった。
「――それを、アイツに言ったかい?」
…言えるわけがないだろう? 恥ずかしい。
「ははっ! まぁな。――あぁ、思ったんだが。わざわざここに来なくてもアイツは…あんたの孫はあんたと会えたんじゃないか? 結構な『力』の持ち主じゃないか」
…だからそこ、だよ。けじめはつけんとな。
「ははっ、なるほどね」
ところで、何か…礼金のようなものは必要なんだろうか?
「いや? もらえるならもらうがな。布施みたいなもんだ」
ふっ、気持ちばかりを、か?
「そうだな。そんな感じだ」
…じゃあ、わしの一番の宝をあずけるよ。
「ん? なんだ? しかも、『譲る』じゃないんだな」
あぁ、そうさ。
「――で? 一体何をあずけてくれるんだ?」
もう、予想はついてるんじゃないかい?
「予想はな。だが、あんたのいう『宝』とは違うかもしれない」
…じゃあ、頼むよ。わしの宝を。
優しい子なんだよ。
爺さん思いの、優しい子なんだ。
どうか、わしの代わりに…わしの分まで、頼むよ。
「まぁ、今回の礼金ならしょうがない」
そんな口調で言っても騙されないよ。わしは人を見る目には自信があるんだ。
――あんただから、頼むよ。
会の家<完>
2003年 9月 6日(土)【初版完成】
2012年 7月21日(土)【訂正/改定完成】