SAKURA

「うわ…っ」
 急な風に思わず声を上げた。

「…すごい風だったねぇ」
 風が止んで、目を開く。
 呟いて、隣の少女に目を向ける。
「ホント…」
 長い髪の少女…妃巳の髪に、風に乗った花びらがついていた。
「妃巳ちゃん…」
 少年…水樹は、呼びかける。
「花びら、ついてるよ」
 今の風の勢いで、なかなかたくさん。

「え…っ」
 妃巳は声をあげて、髪に指を通した。
 妃巳の指先に花びらが触れる。

「妃巳ちゃん」
 水樹は繰り返し呼びかけて、髪に触れた。
「僕が取るよ」

 妃巳と目が合うと、水樹はふわりと笑う。
「春だね」
 ――まるで、はなの化身のような妃巳へと告げた。

ちょっとあぶない人形師モドル