「春ねぇ…」
桜の花を見て…何故か、胸が切なくなるのは。
散る儚さが故か。
潔さがためか。
「――だね」
しみじみとした実世絵の呟きに知都世もまた、頷いた。
「ガラじゃないじゃん」なんてことも言えたが、実世絵の様子に…知都世はただ、静かに眺める。
「実世絵ちゃーん!! 知都世ーっ!!」
呑気な声に、それぞれが視線を向けた。
…ふわふわの黒髪をショートカットにした少女…莢華。
「お待たせーっ!!」
…今までの少しセンチメンタルな気分はドコへ。
というような元気な声。
知都世と実世絵はなんとなく顔を合わせて、どちらからともなく笑ってしまった。
「ナニナニ? なんかおもしろいことあった?」
二人の様子に莢華は問い掛ける。
「別に」
「ただ、桜がきれいね、ってだけ」
知都世と実世絵はそれぞれ莢華に応じた。