WAKABA

 ――彼女以上など、いない。

「リーシャ」
 呼びかけに振り返るのは深い森の緑と…若草色の瞳の少女。
 若葉よりも淡い色の瞳。

 真っ直ぐに、自分を見つめる――瞳。
「なんだ、アゴル」
 ――忌み色フラジールと呼ばれる色の自分を――真っ直ぐに見返す、瞳。

 彼女以上などいない。
 彼女以外などいらない。

 ――リーシャだけいてくれれば――それで。
 …それだけで。

「…なんでも、ないよ」
 呼んでみただけ、と。
 アゴルはリーシャを腕に閉じ込めた。

リーシャモドル