若葉の中で瞳を瞑る。
別に眠いわけではない。
ただ…此処が一番、独りになれるから。
カシーサは木の上…枝に座り、幹に背を預けて独りの時間を満喫する。
風の音。
…風に揺れる、木々の葉の擦れる音。
――さわさわと耳に届く音は、静かな海のような。
「カシーサ、さん」
声にカシーサは目を開いた。
――自分を呼ぶ、少女の声。
「――ミルティエ」
静かな声に少女はキョロキョロと辺りを見渡した。
…が、上にまで視線が回っていない。
カシーサは口の端を上げ、僅かに笑う。
木から下り、ミルティエの視界へと姿を現した。
「あ…木の上にいらっしゃたんですか?」
「――ああ。…どうした?」
問い掛けにミルティアは応じる。
「ガナマくんが、探してきて…と…」
「………」
カシーサの脳裏に、天使の面を被った悪魔少年が過ぎる。
(ミルティエを使ってきやがったな…っ)
ガナマに応じずともミルティエには応じるであろうカシーサの行動が利用された。