SIZUKU

「いーカンジに雨だな」
「…イイカンジですか?」
 学校に向かう電車の中で、克己の呟きに眞清はややため息交じりに応じる。
 …時期的にしょうがないのかもしれないが、しとしとと降る雨。
 ――梅雨である。

「お前、雨好きそうじゃん」
「…どこからそんな判断に至るんですか…?」
 眞清の問い掛けに克己は僅かに首を傾げた。
「なんとなく」
「……」
 それはまぁ、出かける用事のないときは雨だろうが雷だろうが雹だろうが…なんでもいいが。
「濡れるのはあまり、好きではありません」
 ポソリ、と零す眞清に克己は瞬く。ポフ、と眞清の頭に手を置いた。
「…なんですか」
「なんでも?」
 克己と眞清は似たような身長…169cmと170cm…なので目の高さもほぼ同じだ。
 克己をガン見する眞清に、克己は僅かに笑う。

「元気出せ」
「……」
 何故か励まされた眞清はゆっくりと瞬くと、ふとひとつ息を吐き出した。
「…わけがわかりません」
 ――口元に、微かな笑みを浮かべて。

豊里高校学生会支部モドル