しとしとと雨が降りだしても、その場にいて動かない。
――その少女に夕夜は走り寄った。
「灯!」
呼びかけ、肩を揺する。
呼びかけにか、揺すられたせいか…灯と呼ばれた少女はゆるゆると目を開いた。
蒼い髪と、瞳。
「…夕夜」
自ら名付けた拾い子の名を、呟く。
「…ナニやってんだ、灯! 風邪引くぞ!!」
「…我は風邪など引かんぞ?」
夕夜の様子に灯は笑った。
…それはバカにしたようなものではなくて、自分を案じる夕夜に対して「心配ない」と言うような。
「…仮にそうだたとしても、オレがヤなの!」
夕夜は問答無用で座り込んだままの灯を立ち上がらせる。
掴んだ腕の…もとより高くはない体温の冷たさ。
夕夜は灯の手のひらを暖めるように包み込んだ。
「――行こう、濡れちまう」
「…そうだな」
夕夜の言葉に灯は頷く。
指先の冷たさに…小さな手を握る手に、力を込めた。