NATUBI

「夏だ!」
「太陽だ!!」
「海だーっ!!!」

 大興奮の友人たちを眺めた。
 …『たち』、とはいっても二人だが。
「元気な奴等…」
 その声に、同じく友人たちを眺めていた日奈は視線を向けた。
「――擢真」
 呼びかけると、顔を向ける。
 染めたわけではない明るい色の髪と、瞳と。まっすぐに、日奈を見つめる。
 強い太陽の下、キラキラして――きれいだと、思う。
「年寄りくさいわ」
 日奈の言葉に擢真は瞬いた。くしゃっと顔を綻ばす。
「ひでぇ」
 苦笑みたいな笑顔。

 ――自分だけ見れくれればいい、と何度願ったか。

「…擢真は行かないの」
 友人二人…きらと響は海に突進していた。
「岡本は?」
「…あたしは、まだいいわ」
「そぉか」
 擢真はそう言って、パタリと倒れこむ。
「俺、ちょっとだけ寝る」
「…年寄りくさい…」
 ぽそりと漏らした日奈の呟きに擢真は「ひでぇ」と繰り返す。

 …日奈を一人にさせない、という優しさ。
(なんとも思ってないクセに)
 これ以上自分をハマらせてどうするんだろう、と日奈は一つ、息を吐き出した。

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