NATUBI

「篤にぃっ!!」
「?!」
 夏の太陽の下、抱きつかれることはなかったが…体当たりをくらった。

「…空」
「はろん♪」
 井沢に体当たりをしてきたのは、隣に住んでる中学生ちびっこ――空だった。

「帰ってきてたんだね」
 大学生の、長い夏休み。
 一応実家に戻ってきた井沢だ。

「あぁ、昨日の夜にな」
「あ、そーなんだ」
 にこにこ笑う空。
 井沢がポンポンと頭を撫でると嬉しそうに笑った。
「…お前なぁ…帽子かぶれよ」
 熱い頭に、思わず呟く。
 井沢の言葉に「えへ」と笑う空。
「――アイスでも食うか?」
「え? アイス?!」
 空の…なんとなく子犬をイメージさせる…瞳がキラキラと輝いた。
「一つくらいおごってやる」
 続けた言葉に空は更に瞳を輝かせた。
「アイス♪ アイス♪」
 言いながら、自然と手をつなぐ。
 ガキだな、と思いながらも井沢はその手を振り払わなかった。

福部中学怪奇譚モドル