「大丈夫か、蘭」
「…大丈夫」
日陰のベンチ。
腰をおろして水分補給中。
眩しすぎる太陽の下…帽子をかぶっていなかったのが敗因なのか、蘭は歩きながらも目の前真っ暗…という事態に陥った。
しばらくしたら視界は正常になったが、一緒にいたトールに心配され、ちょっと休憩中だ。
「…トールは、大丈夫?」
「ん?」
蘭の言葉にトールは視線を向け、数度瞬くと少しばかり笑った。
「オレは、ヒトではないからな」
トールは言いながら蘭の頬に自らの手の甲を当てる。
…冷たい。
ひやり、というわけではないが…蘭よりも確実に低い体温。
気持ちよくて、目を閉じた。
トールは今度は手の平で蘭の首にそっと触れる。
「気持ちいいか?」
「…ん…」
ふぅ、と蘭は息を吐き出す。
蝉がうるさいはずなのに――静かな時間だった。