YUUHI

 沈んでいく日の色を、ぼんやりと見ていた。
 視界を染め上げる赤。
 オレンジに染まる町。

 瞳に映るのは、いつもと同じ場所だというのに。
 印象が、全然違う。
(すごいなぁ…)
 この色を――この世界を、斗織は見ているだろうか。
 真斗はそう思いながら瞬いた。
 …思うのは、近くはない場所で暮らす双子の兄。

 白い病室で闘うのは…闘えるのは、『斗織にまた逢いたい』と願うから。

 斗織、と声にしないで呟いた。
 執着とさえいえそうな思いを抱くのはなぜか、自分自身でわからないまま。
 …それでも、逢いたいと思う。
 また逢いたいと、願う。

 ――だから、負けるわけにはいかなかった。
 己に巣食う病魔に。
 斗織とまた、逢うために。

いとしいきみへモドル