夕日に染まったような色。
そんな印象の…鮮やかなオレンジ色の髪。
「ファズさん」
呼びかけるとファズは振り返った。
リコを見とめると、穏やかな笑みを浮かべる。
「リコ」
自分を呼ぶ声に、リコは我知らず胸元をきゅっと掴んだ。
夕日に染まる街。
人々。おそらく、リコ自身も。
だけど――ファズは、染まらずにリコの瞳に映る。
鮮やかなオレンジの髪も、赤茶の瞳も、何にも染められない。
「もしかして…待たせた?」
「ん? 全然」
リコの問いかけにファズは笑った。
そっと、手を差し出す。
「行こう」
「…うん」
差し出された手に、自分の手を重ねる。
ファズは重ねられたリコの手を軽く握って、夕日の方へと足を進めた。