「実世絵ちゃん」
「なぁに、莢華ちゃんっ」
少しキツめの顔立ちである実世絵は、莢華の呼びかけに語尾にハートが付いていそうな口調と、ナカナカの勢いで振り返った。
実世絵のそんな態度はいつものことで、別段動じないまま莢華は言葉を続ける。
「紅葉してるの、気付いてた?」
「え?」
聞き返す実世絵に、莢華は視線を動かした。
莢華の視線の先を見つめ、実世絵は口の中だけで「紅葉、か」と呟く。
「えぇ、気付いてたわ」
「あ、ホント?」
「えぇ」
実世絵は指先で自分の家の方向を示す。
「学校にくる途中、見事な紅葉の樹があるの」
その紅葉も、既に赤く染まっていた。
…とはいっても、気付いたのは昨日だったりするのだが。
「へぇ…大きいの?」
実世絵は「そうね」と首肯する。
「どこら辺?」という莢華の問いかけに、実世絵は大体の場所を説明する。
「ちょっとだけ遠回りになるけど…行けない場所じゃないね」
「…行ってみる?」
「うん!」
素直に頷いた莢華に、カワイイモノ好きな実世絵はきゅんとした。