ちらほらと落ちてくるものに手を伸ばした。
…けれど、届かず。
紅葉の葉は、地面へと落ちる。
「なかなかとれないなーっ!」
藍はちょっとばかりむくれつつ声を上げた。
落ちてきた葉っぱをキャッチして、一緒にいる女の子…雨衣香にイイトコロを見せたいのだが。
「らんちゃん」
「ん?」
雨衣香は藍へと手を伸ばす。
瞬きながらその様子を見つめる藍に「うごいちゃダメ」と雨衣香は言って、藍の髪に触れた。
…いや。
「はい、これ」
――藍の頭にくっついていたらしい紅葉を、取ってくれた。
「…」
藍はしばらく紅葉と、雨衣香の顔とを交互に眺める。
――別に、紅葉が欲しかったわけではないのだが。
「…ありがと」
「どういたしまして」
紅葉を受け取ると、雨衣香はにっこりと笑う。
…彼女がくれたものを、無下にはできない。