TOIKI

 深緑の髪に指を絡め、そのまま梳いた。
 クセのない髪は、指通りがいい。

「…アゴル」
「ん?」
 呼びかけにアゴルは機嫌よく応じる。
「その…」
 抱きしめている腕の中の少女が少しばかりもぞりと動いた。
 アゴルは髪を梳いていた右手を動かし、背後から頬を撫でる。
「まだダメ」
「……」
 端的なアゴルの言葉に少女は一つ吐息をついた。
 ――けれど、それだけで。

「――リーシャは優しいね」
 顔を上げさせ、何かを言う前にそのまま吐息を奪う。

 ――貪欲な己と、優しい彼女。
 この温もりを、手放すことはできない。

リーシャモドル