空を見上げ、息を吹きかけた。
白く染まる吐息にループルは数度瞬く。
(寒くなったなー…)
白い吐息はすぐに見えなくなった。
ループルは再び息を吐き出す。
巡りゆく季節。
色とりどりの花が咲き、うだるような暑さの頃を過ぎ、今は枯れ葉が舞う。
時間は過ぎていく。
「――ループル」
呼びかける声にスープルは瞬いた。
誰か、というのはわかっている。
「はい」
視界に映ったのは、予想通りの男。
黒髪に、宵闇のような深い藍色の瞳。
ループルの師で――唯一。
一度離れ…けれど、再び出逢えたスール。
「どうした。――空を、見て」
「寒くなったなぁ、と」
ループルは思っていたことをそのまま告げた。
スールは「あぁ、」と息を吐き出す。
花の頃も日差しの厳しい時も…落ち葉踏みしめる今も。
ずっとずっと、彼の傍に。
――これからも、ずっと。
「あ」
「…流れたな」
流れる星。
――今から願っても、遅いだろうか。
これからもずっと…スールの隣にあることを、願う。
それが、ループルの…多分、唯一の願い。