TOIKI

 想いを馳せ、瞳を閉じた。
 現在いまへと思考は戻り、隣の存在を思い出す。
「慧」
 あまり表情の変化が見られない少女が顔を上げた。吐く息が白い。

「…風邪をひくよ。中に――」
「入ったほうが」と…全て言いきる前に、少女が男の手を握った。
 男は少しばかり目を見開く。

「しょう、も」
 一緒でなければダメだ。
 と小さな手が示した。
 小さな彼女の手は、いくらか冷たい。
 ――血潮のない霄の方が更に冷たいのに。

 少女が息を吐く度に、白く染まる。
 霄は膝を折り、視線を少女へと合わせた。
 ――澄んだ瞳に、作り物ではない笑みを見せる。
「――あぁ、ワタシも」
 言って、少女を抱き上げた。
 抱き上げて、抱きしめて、家へと向かって歩き出す。

 これを、護る。
 ――そう誓い、約束をした。
 いつか…霄からすれば、ほんの瞬きの間。
 役割を終える日まで。

会の家モドル