UTAGE

「酒ってうまいモン?」
「…人により、だろうな」
 ガナマの問いかけにカシーサは淡々と応じた。
 言いながらカシーサは酒を飲む。
 見る限り、カシーサにアルコールによる変化は見られない。
「ふぅーん。…あ、おねーちゃん!」
 カシーサに対するモノとは全く違う声音で呼びかけた。
 呼びかけに少女…ミルティエは「なぁに?」とガナマに笑みを見せる。
「コレ、」
 ガナマにズズイと差し出されたグラスにミルティエは「? これ?」と瞬く。
 「飲んでみて」と輝く笑顔のガナマに促され、ミルティエは疑う様子なくグラスに口をつけた。
「――? おいっ!」
 カシーサは今更ながら、ミルティエに差し出されたものが今の今までカシーサが飲んでいた酒だと気付いた。
 …蒸留酒。
 初心者であればおそらく、かなりキツい。
「っ? ケホッ!!」
 ミルティエは涙目になって、むせた。
 カーッと喉が…体が熱くなるような気がする。
「…ガナマ…っ」
 カシーサはやや唸った。
「コレ…な…お酒…っ?!」
 今更ながらミルティエはそう気付く。
 ニオイで気づいてもよかったかもしれないが、元々酒を飲まないため「何のニオイ?」としか思わなかった。
「おねーちゃんはお酒飲めないかんじー?」
「こ、コレはちょっと飲めないかも…」
 ミルティエの答えに、ガナマはカシーサに囁いた。
 ――飲ませれば、好き勝手できるかもよ?
 ガナマの発言に、元々表情が見られないカシーサから、表情が無くなる。
「じゃあ、カシーサは酒で、僕とおねーちゃんはジュースね」
「う、うん…?」
 何の話かわからないまま、ミルティエは頷いた。
「うたげーうたげー♪」
「…宴?」
 小さい子なのによくそんな言葉を知ってるなぁ、とミルティエは感心し。
 …なんで宴? とも思った。

暗殺業モドル