「竜海…」
「なんだ」
「…って、お酒飲むの?」
見た目は十代前半…どんなに年嵩に見ても中学二年生程度の竜海の片手に、大瓶の日本酒があった。
「ああ」
端的に頷いて見せた竜海に「不良〜っ」と斐は騒ぐ。
騒ぐ斐に竜海はゆっくりと瞬いた。
口元だけに、笑みを浮かべる。
「…生きている時間だけを思えば、飲んでも障りはない」
竜海の言葉に斐はピタリと騒ぐのを止めた。
――成長の止まった体。
大人になることのない、容姿。
…斐がそうなってから、どれだけの時間が経っただろうか。
――斐よりも永い時、そうだという竜海は…どれほど、この姿のままで在るのだろうか。
「斐も飲んでみるか?」
日本酒の大瓶と猪口、となんだか竜海の外見にそぐわない二つを見て、斐は数度瞬く。
…結局。
「じゃ、舐めてみる」
好奇心と…竜海にほんの少し付き合うために、酒を湛えた猪口に手を伸ばした。