「あんこ、見て見て!」
「ん?」
やや興奮しているようにも見える友人の声に、有子はのんびりと視線を移した。
「…雪?」
内外の気温差で白く曇った窓の向こう…。
空が手で曇りを拭った外に、チラホラと落ちる白いもの。
「雪だよね!」
嬉しそうな表情に有子は窓の外から友人――空へと視線を移す。
「積もるかなぁ」
ワクワク、と言わんばかりの空に有子はひっそりと思う。
「…犬は喜び庭駆けまわり…」
「ん? なんか言った?」
思っていただけだったつもりの有子は瞬いた。
…口に出してしまっていたらしい。
「…や、別に」
「そう?」と首を傾げながらも、空はあまり気にしないことにしたらしい。
視線を再び窓の外へと戻す。
「積もるといいなぁっ!」
呟きに、有子は我知らず口元を手で覆う。
(…犬…)
なんだか子犬が雪に興奮しているようだ、と有子は口元に笑みを刻んだ。