「きゃ…っ!」
リコは突然足を滑らせ、思わず声を上げた。
「…っと」
…そんなリコを、ファズが支える。
「大丈夫か?」
問いかけるとリコは頷いた。
…頷いたが――転びかけたリコを支えるため、ファズに半ば抱きしめられている…という現状に気付き、リコは一瞬にして顔を上気させる。
「あ、ありがとう…っ!!」
顔が一気に赤くなったリコの様子にファズは数度瞬いた。
「…寒いか?」
「へ?!」
ファズの問いかけにリコは素っ頓狂な声を上げる。
そんな声を聞きながらファズはそのままリコを抱きしめる力を強めた。
「なんてな♪」
「?!」
背後から抱きしめられたままリコは声なき声を上げる。
「――ヤだったら逃げて」
「……」
言葉に、リコは瞬いた。
――嫌なハズがない。
相手は、ファズなのだから。
リコは小さく首を横に振る。
その様子にファズはリコに気付かれないようにそっと、安堵の吐息を漏らした。