「灯ーっ!!」
呼びかけに、灯は振り返った。
寒さを防ぐためにもこもこと着込んだ二人の子供に灯は僅かに目を細める。
「見て! すっげーでっかいヤツ!!」
蒼い髪の子供が言いながら氷柱を示した。
もう一人の子供も、同じような大きさの氷柱を灯へと示す。
「…すごいな」
「だろ?!」
「…しかし、どうやって取ったんだ?」
氷柱は大抵、軒下に出来る気がする。
小さな二人の子供が取れるような低い位置に氷柱ができるのだろうか、と思って灯は問いかけた。
「…折った」
端的に、紅い髪の子供が応じた。
付け足すように蒼い髪の子供が「枝でつついて落とした!!」と告げる。
灯はその様子を思い浮かべ…危ないな、と思った。
折れた氷柱が子供に当たってしまったら。
「夕夜、明夜…」
危ないから、今度はやめたほうがいい。
そう告げようとしたら、氷柱が灯に差し出される。
「やる!!」
灯は差し出された氷柱に数度瞬いた。
蒼い髪の夕夜…それから紅い髪の明夜。
二人が二人とも、灯へと氷柱を差し出した。
――灯への土産だったのか、と今更気付く。
「…ありがとう」
受け取りつつ、灯は笑った。
ただ、危ないから今度からやらないように…と穏やかに諭しながら。