KASUGA

 温かい陽射し。…春の日光。
 空気を吸い込めば、その空気も春めいている気がする。

 春はどうしてこう、陽気な気分になるのだろう。
 温かくなって手足を伸ばしたくなるから…だろうか。
(まぁ、オレっちのテンションは大まか高いけど)
 ファズはそんなことを思いながら隣の少女に視線を向けた。
 ファズの視線に気付いたのか、リコもまたファズを見上げ少しばかり微笑む。
 リコの頬笑みにファズは数度瞬いた。
 ――春だから、ばかりでなく。
 リコにつられるようにして、ファズもまた笑顔を浮かべる。
 ――隣に、リコがいてくれるから…テンションが上がるのだろうか。

「リコ」
「? なぁに?」
 呼びかければ首を傾げながらも応じて…隣にいてくれる。
「次、ドコ行く?」
 ファズの問いかけに行きたい場所を告げたリコに「おし」とファズは手を差し出した。
「じゃ、行くか!」
 ファズの差し出した手に、リコが手を重ねる。
 ファズは手を握り、歩きだす。
 ――春も夏も秋も冬も。
 一緒に、過ごせればいい。
 そう思いながら。

グルーテンルストの風モドル