「今回はいいねぇ」
マヒルは安堵の吐息を零すように、言葉を零した。
そよそよと吹く風。
温かい陽射し。――春の、淡い色の草木。
「甘い」
「…………レイラン……」
いい気分をぶち壊した存在――レイランに、マヒルは思わず非難の目を向けた。
そんなマヒルの傍に立つと、レイランは指先で一方を指し示す。
…素直にレイランの示した方向を見てしまったマヒルは、口元を若干ひくりとさせた。
春の日差しと、柔らかな風…草木。
それに不釣り合いな…深い、闇。洞窟だろうか。
「…まさか?」
マヒルが問いかけると、レイレンはにぃーっこりと笑った。
回れ右をしかけたマヒルの手を掴み、洞窟へと引っ張る。
「ゴーゴーマヒル♡」
「簡単に言うなーっ!!」
マヒルの叫びも空しく…レイランはマヒルを洞窟へと強制連行した。