春の陽射しの中…眠る、一人。
「……神子…」
トーマは一つ、安堵の息を漏らした。
…いつものことながら、忽然と姿を消した神子。
街に出るときは、一人で行動しない――そう約束をしたから、敷地内にいるとは思っていたが。
見つけられたことに、安堵した。
健やかな寝息を立て、木に背を預けて、眠る。
…陽射しが、彼女を柔らかく包んでいた。
温かいとはいえ…身一つでは、風邪を引くのではないか。
トーマはそう思って、少女を揺り起そうとした。
手を伸ばして…今更ながら、神子の手元に本があったことに気付く。
神学の――彼女が「好きではない」と言いきっていた学問の、本。
「――……」
勉強をしていて眠くなった…というところだろうか。
白銀の髪が陽光を浴びて、淡い光を放った。
風がトーマの頬や、眠ったままの少女の髪を撫でる。
――もう少しだけ、このままで。
トーマはそう思って、羽織っていた上着を彼女へそっとかけた。
傍に控えるようにしてトーマもまた腰を下ろし、彼女を見つめる。
(…もう少し、このままで)
トーマの瞳に宿るのは、柔らかな光だった。