KASUGA

 公園のベンチで猫が一匹、座っていた。
 そこは自分の席、と言わんばかりに。

「カンタ!」
 穏やかな呼ぶ声に、瞳を閉じていた猫が目を開き、呼びかけた発信源へと視線を向ける。
「いいこに待ってたね」
 穏やかな呼び声は、少年のものだった。
 黒髪に、緑がかった青い瞳の少年。
「なぁう」
 応じた猫は、温かな春の陽射しに染まったような金の毛並みと、夏の空のような青い瞳。
 少年が、猫の頭を優しく撫でた。
 穏やかそうな少年が目を細めると…思いの外大人びた印象の笑みとなる。
「待たせてごめんね」
 少年の手に猫は頭を擦り寄せた。
 猫に応じるように、少年は猫を優しく撫でる。
「行こ」
 少年の声に答えるように「なぁう」と猫はひと声上げた。
 そして、少年と猫は歩きだす。
 ――彼等を呼ぶコエの元へと。

少年と猫モドル